自己破産するとどんな制限があるのか
最後の手段とデメリット
債務整理にはいくつか方法があり、任意整理や個人再生などもその1つです。
そんな数ある手段の中でも自己破産は最終手段といわれています。
自己破産には、借金から離れられるというメリットがあるものの、無視できないデメリットも付きまといます。
どうしても返済ができない場合はやむを得ませんが、個人再生や任意整理など他の方法を検討せず、安易に自己破産を選択するのは早計です。
今後の人生に大きく影響することになりますから、慎重に選択すべきでしょう。
制限が課される
自己破産をすると借金を帳消しにできる代わりに、様々な制限が課されます。
新しいクレジットカードを発行できなくなったり、財産を所有している場合は、価値次第で手放さなければならなくなります。
自己破産は効力の大きい債務整理ですが、それゆえに代償も大きいものなのです。
自己破産の制限と適用範囲
仮に家族の誰かが自己破産を申請して免責が確定したとしても、その本人以外に影響が及ぶことはありません。
自己破産によってもたらされる各制限が家族に課されることもありませんし、その点は本人も家族も心配する必要はないでしょう。
ただし、一定の財産以外は手放すことになりますから、債務者と家族が同居している場合はその影響を避けられないかもしれません。
申請する前に、しっかりと話し合うようにしましょう。
手放す財産とは
ここでいう手放すことになる財産とは、住宅や、ローンを支払っている自動車が該当します。
住宅は通常その人が持つ最も大きな財産となるため、マイホームを手放すことからは逃れられません。
自動車の場合は、ローンの返済を済ませているのであれば手元に残る可能性もあります。
基本的に自己破産は周囲にはバレないといわれていますが、財産を手放すことによって、自己破産したことが他人に知られてしまうこともあるので覚えておきましょう。
自己破産と職業の制限
解雇される可能性
自己破産が原因で解雇される可能性は、直接働いている会社に迷惑をかけていない限りはありません。
法律上、そのような理由による解雇は不当となります。
仮に会社に自己破産した顛末が知られたとしても、それを理由に解雇されることはないでしょう。
そのため、働きながら自己破産する場合は、一定の収入源を保ち続ける事が可能です。自己破産をすることによって、いきなり生活が困窮するわけではありません。
就けない仕事
自己破産をすると、しばらくの間就けなくなる職業が存在します。
弁護士や税理士、行政書士などの士業や商工会議所、信用金庫の役員等がその制限を受けますが、自分が就いているあるいは目指している職業がそれに該当するのかは、事前にチェックしておきましょう。
また、今後ずっと破産者がその職業に就けないわけではありません。
自己破産を申し立て、免責が確定して復権することで再度資格を活用できるようになります。
復権には他にも条件があり、債務の消滅や破産手続きをした後に一定期間が過ぎても、復権したとみなされます。
在職中の自己破産
自己破産の資格制限を受ける職業に就いていた場合、その在職中に自己破産した場合は少し複雑になります。
基本的には退職扱いとなりますが、復権した後に再就職することも可能です。
仮に退職扱いにならなかったとしても、業務内容に何らかの変化は見られるでしょう。
そして、ここで注意したいのが、免責が許可されなかったケースです。
その場合は一定期間待たないと手続きが完了せず、10年間は自己破産の影響がなくなるのを待つしかなくなります。
つまり、制限を受けている仕事には就けなくなるのです。
このような事態になることはまれですが、1つの例として頭に入れておくことは大切です。
自己破産と旅行への影響
旅行に行ける場合が大半
債務整理の中でも最も重い自己破産。
手続き後にネガティブになってしまい、旅行に行くことすら躊躇ってしまう方もいます。
しかし、自己破産は新しい重荷を背負わせるものではなく、一旦借金から解放されるための救済措置です。
国内旅行に行くことを咎められることはありませんし、後ろめたさを感じる必要もありません。
自己破産は再出発の意味も込められているため、リフレッシュして旅行し、気持ちを前向きにすることも大切です。
しかし、ほとんどありませんが、海外旅行には行けないケースも存在します。管財事件による自己破産の場合です。
管財事件とは
自己破産ではまずその人が持つ財産をチェックされます。
基本的に、自己破産をするまでに追い詰められた人は大きな財産を持ち合わせていません。
その財産を確認するためにもお金はかかりますし、少ない持ち合わせで自己破産を申し立てした人は、より追い詰められることになります。
そのため、裁判所では明らかに大きな財産を持ち合わせていない債務者に関しては、破産手続きと終結を同時に行います。
しかし、そうでない場合は、財産を処分して換金されたお金を債権者に分配しなければなりません。
この後者のやり方を管財事件といい、この手続をしている最中は海外へ赴くことができなくなります。
とはいえ、管財事件は事例としては少なく、基本的には前者の同時廃止が採用されます。
その他の管財事件と条件
一定以上の財産を持ち合わせている以外にも、管財事件となる条件があります。
それは、破産手続きに対して何らかの後ろめたい行為を行った場合です。
財産を処分されたくないあまりに隠したり、逃亡したりすると管財事件となります。
また、自己破産をする理由がギャンブルである場合も管財事件として扱われるため、その期間中に旅行へ行く場合は一定の制限が課されます。
管財事件が解かれるまで
管財事件手続きが完了するまで、つまり免責が確定するまでの期間は旅行へ自由に行けなくなります。
期間にして約半年ほどかかるケースが多く、1年近くかかる場合もあります。
ややこしい判断が多くなるため、管財事件になる可能性が高ければ弁護士に相談するか、そもそも旅行を取りやめることが、事態を複雑化しないコツとなるでしょう。
転居とデメリット
同時廃止の場合
同じ自己破産でも、同時廃止の場合は転居を制限されることはありません。
自己破産者の多くは同時廃止による債務整理となるため、多くの破産者には関係のない話となります。
こうした制限を受けるのは、破産手続きをしてから終了するまでの期間中であるため、手続きと免責の確定が同時に決定される同時廃止には影響が出ないのです。
一方で、影響が出るのはもう一つの破産方法である管財事件となります。
管財事件と許可
管財事件では転居に制限がかけられますが、全く不可能になるわけでもありません。
転居をしたい旨を伝え、それに許可が下りれば可能となります。
明らかに逃走を目的とした転居であったり、その他の非合理的な理由であれば許可は下りませんが、そうでなければ許可されることがほとんどです。
きちんとどこへ移転するのかを伝え、移転することになった背景も明確であれば、たとえ管財事件であっても転居は可能となります。
行動範囲の制限
旅行や転居など、本人の行動に制限がかけられる管財事件ですが、長期的な旅行等でない限りは制限を受けることはないでしょう。
数日間にわたって、家を空けなければならなかったり、出張の予定が入ったとしても問題のないケースが大半です。
あくまでも財産を隠したり、逃げて一連の流れを見て見ぬ振りしようとしている債務者に向けての制限なので、きちんと真っ当な方法で手続きを終わらせる気のある債務者には、配慮されることが多いです。